No.7_Rg3の心筋線維症(心不全の危険因子)抑制メカニズム
北里大学 客員教授 山口芳正
前回まではジンセノサイドRg3、強化紅参OKBTの血圧や男性機能に対する効果についての報告を紹介してきましたが、今回は、Rg3の心臓線維症(心不全の危険因子)に対する効果について紹介します。
心臓の線維化とは、心臓の細胞が傷ついたり死んでしまったりして、その部分が硬いコラーゲンの繊維(かさぶたのようなもの)に置き換わることです。
これは、他のほぼ全ての心疾患で見られる特徴的な終末期の変化であり、心不全の重要な危険因子でもあります。心不全の有病率は、2012年の2.4%から2030年には3.0%へと増加すると予測されています。
これまでにRg3は、心臓保護効果をもつことが報告されています。
本研究では、培養細胞と動物の両方で、心血管疾患において重要な役割を果たすことが知られているアンジオテンシンII(以下、Ang II)で誘発した心臓線維症に対するRg3の効果を評価しました。
【Rg3のマウス心臓線維化(心不全の危険因子)に対する効果】
マウス心臓線維芽細胞に対するRg3作用
摘出したマウスの心臓から培養した線維芽細胞をAng IIで処理して心臓線維症を誘発し、それに対するRg3の効果を評価しました。その結果、Ang II処理によって、線維症に関連した複数のタンパク質の発現が上昇し、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体の発現低下が誘発されました。それに対してRg3は、これらの発現の変化を改善しました。
次に、これらの変化にかかわるシグナル伝達系に関係するタンパク質の発現変化を調べました。Ang IIによってこれらのタンパク質の発現が増加しましたが、Rg3によってこれらの増加が抑えられました。
最後に、GLP-1受容体の働きを抑える作用を持つことが知られているエキセンジン-3(9–39)を用いて、GLP-1受容体シグナル伝達の役割を検証しました。その結果、エキセンジン-3(9–39)は、前述したような線維症関連タンパク質やシグナル伝達系に対するRg3の効果を打ち消しました。
したがって、Rg3の効果はGLP-1受容体を介して作用していると考えられます。
マウス心臓線維化(心不全の危険因子)に対するRg3作用
C57BL/6Jマウスを4群(各群6匹)に分け、対照群、Ang II投与群、Ang II + Rg3(50 mg/kg)投与群、Ang II + Rg3(100 mg/kg)投与群とし、心臓線維症に関連するタンパク質群の発現変化を調べました。
Rg3投与は、Ang IIを注入したマウスの心臓組織において、コラーゲン沈着を抑制し、線維芽細胞を用いた実験と同様に、線維症に関連した複数のタンパク質やシグナル伝達にかかわるタンパク質の発現上昇を抑えるとともに、GLP-1受容体量の低下を改善しました。
【まとめ】
Rg3は、GLP-1受容体の働きを高めて、心臓線維症(心不全の危険因子)に関与するシグナル伝達経路が活性化することを阻害することにより、心臓の線維化(心不全の危険因子)を抑制していると考えられます。
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紹介論文:Folia Histochem Cytobiol 2026, 64, 60–74
Ginsenoside Rg3 inhibits Ang II-induced cardiac fibrosis via the GLP-1 receptor signaling pathway
Jie Zhao et al
