酵素紅参BTEX-Kの虫歯予防メカニズム
北里大学 客員教授 山口芳正
今回も前回に引き続き酵素紅参BTEX-Kの作用について紹介します。
高麗人参というと免疫を高めたり疲労を回復させたりする作用が注目されていますが、今回は、虫歯にも効果を示す可能性があるというとても興味深い研究です。
虫歯は口腔衛生上の大きな問題であることから、口腔医療にかかわる研究者たちは、安全で効果的な虫歯の予防法や治療法の開発に取り組んでいます。
本研究では、高麗人参に含まれている有効成分の1つである化合物Kと、その化合物Kを豊富に含んでいるBTEX-Kが、虫歯の予防や治療に使用できるかどうかを評価しました。さらに、口腔衛生において重要な要素である炎症に対する抑制効果についても調べました。
【酵素紅参BTEX-Kの虫歯に対する作用】
①バイオフィルム形成に対する作用:S. mutansは、細菌プラークの集合体であるバイオフィルムを形成することが知られています。
バイオフィルムは、細菌同士が集まって作られる粘性のある膜で、この膜が存在することで、その内部で虫歯菌や歯周病菌が活発に活動し、口腔内の各症状が悪化しやすくなります。
そこでまず、化合物KとBTEX-KのS. mutansによるバイオフィルム形成に対する効果を調べたところ、それぞれ20μg/mLおよび100μg/mLの濃度でバイオフィルム形成を阻害しました。
したがって、BTEX-Kには、S. mutansが歯面に付着して虫歯を発生させる能力を低下させる作用があると考えられます。
②炎症に対する作用:次に、サイトカインに対する効果を調べました。サイトカインは免疫細胞から放出されるタンパク質で、通常は免疫システムを担っていますが、過剰に放出されると炎症を引き起こしてしまいます。
その結果、化合物Kはサイトカインの発現を減少させませんでしたが、BTEX-Kは効果的に抑制しました。
さらに化合物KとBTEX-Kは、どちらも炎症を引き起こす物質を合成する酵素の発現も抑制しました。
これらの結果は、化合物KとBTEX-Kが、抗炎症作用を通して虫歯を予防できる可能性があることを示しています。
③乳酸産生に対する作用:S. mutansによる虫歯やバイオフィルム形成には、乳酸の産生が関与していることが知られています。
そこで、次に化合物KとBTEX-Kが乳酸産生に対する効果について検討しました。
その結果、化合物KとBTEX-Kは、S. mutansの増殖を効果的に抑制し、歯における乳酸産生を抑制しました。
④ラットによる試験:最後に、S. mutansを歯に塗ることで虫歯を誘発したラット用いて、歯のエナメル質と象牙質の硬度を測定したところ、BTEX-Kを歯に塗布することにより硬度の低下が抑えられました。
これらの結果から、BTEX-Kは虫歯を予防する効果がると考えられます。
【まとめ】
虫歯を予防するためには、歯の再石灰化を促進することが大切です。これは、酸を産生する細菌によって脱灰された歯で、ミネラルを回復させることを意味しています。
本研究によって、化合物KとBTEX-Kの両方が、カルシウムやリン酸などのミネラルを歯に沈着させることで再石灰化を促進し、歯を強化し、初期段階の虫歯病変を逆転させる新しいアプローチとなる可能性があることが示されました。
化合物KおよびBTEX-Kは、虫歯を予防するだけでなく、炎症の予防や治療に対しても新たなアプローチとなる可能性があります。
紹介論文 Journal of Oral Biosciences 2024, 66, 19
【虫歯】薬理効果評価(In-vitro)
Jin-Hwan Oh et al.
